[第1章]風早國造神主講演録・遺稿集
未来を担う風早の若者たちへ - 君達には物部氏の血が流れているんだ! -
正しい秋祭りの継承を願って

3 祭りの順序

井上宮司

 

あまり長くお話しすると時間がなくなってしまいますので、その次の「祭の順序」にお話を進めたいと思います。

お祭りというのは、今申しましたようにお祓いから始まりお祓いに終わります。スポーツですと、球技でも柔道でも剣道でもすべて、礼に始まって礼に終わるといわれております。お祭りも同じでございまして、祓いに始まって祓いに終わるわけです。

お祓いするのは神主さんだけだろうと思われるかもしれませんが、そうじゃございませんで、皆さんも結構お祓いをやっているわけです。それはどういうことかといいますと、朝、目が覚めると必ず顔を洗う。顔を洗い、歯を磨きますね。今はどんなですか?以前は女の子は朝シャンというのをやりましたが、今、男の子もやるんですか?いずれにしましても、顔を洗い口をゆすぐ(風早方言:本来は漱(すす)ぐ)わけです。これも禊ぎ祓いです。水をかぶったりする人もおります。これはやはり禊ぎ祓いです。日本人はお祓いというのが非常に好きなんです。お祓いをして清らかになり、清浄(しょうじょう)、穢れを祓いのける。これが祓いです。

お祓いをして初めて清々しいものになるわけです。

たとえばこの時計をお買いになっても、時計を買ったらお金を払うでしょ。払わなかったら自分のものにはならないわけです。

お金を払って初めて自分のものになる。自分のものになるから、「やった、時計を買った」となるわけでしょ。カメラだってそうでしょ。払って「ああ、やった」となる。払わなかったらしょっちゅう気になるでしょ。お祓いをする、金を払うことによってすっきりとするわけです。そういうことです。服が汚れていたら埃を払いのけるでしょ、塵でも払いのけるでしょ。ふっと払いのけるのを息吹というわけですけどね。そういうふうに祓うということを、日本人は非常に大事にしておるわけです。

お祭りもやはりそうでありまして、一番最初に、お祭りに使うすべてのものを祓うわけです。その次にしますのが、宵祭り、宵の祭りです。このときには何をするか。もちろんお祓いもしますが、夕べのお神酒と朝のお神酒を差し上げる。このときには白酒(しろき)と黒酒(くろき)のお酒を捧げる。白いお酒と黒いお酒を差し上げる。これを三献、神様に差し上げる。白酒というのは清酒のことです。黒酒というのは今でいう甘酒みたいなもの。ここのお宮では一晩でお酒をつくってしまうという特殊な、違ったお供えです。一夜酒というのを差し上げる。どちらも3回差し上げる。これが宵の祭りの神事です。

次にするのが例大祭(れいたいさい)。それが終わりますと今度は、「御動座祭(ごどうざさい)」。座を動かすお祭りですから、ここに神様がちゃんとおいでになった。そしてこれは神様がいつもおいでになるところですから、ここを離れて座を動くわけですから、お神輿の中に行かれる。これが御動座祭というお祭りです。

これが先ほど言いましたように、普通のお祭りでしたら、國津比古の方から先にお祭りが始まるわけです。御動座祭のときにだけ、かえって櫛玉さんの方から始まる。これはまた後でお話しします。

それから「渡御」。お神輿が出ていって町中を巡幸、回っていく。お神輿が帰ってくると「宮入り」。そしてお神輿を落として壊してしまう。これが秋祭りの順番です。