[第1章]風早國造神主講演録・遺稿集
未来を担う風早の若者たちへ - 君達には物部氏の血が流れているんだ! -
正しい秋祭りの継承を願って

11 使い捨ての文化と常若とこわかの思想

司会(塾長)

このあいだテレビで、日本人が最近使い捨てのいろいろなものを捨てて、まだまだ使えるのに捨ててしまうというようなこと。ごく最近の高度成長時代に乗って収入が上がり、物が増えたから始まったのだという一般的にはそう思っていたらしいんですけど、ある人が「いや、そうじゃないんだ」というようなことを言って。ずっと昔から、日本人は「穢れ(ケガレ)」という言葉を使うと。そのときにたとえ話で、たとえば自分が使っている箸を一生懸命洗って、洗剤つけたり煮沸消毒したりして一生懸命洗って、衛生学上はほとんどきれいなもの。けれどもそれを「これは大事なもんじゃけん、やらい」と言われても、もらったほうは使えませんね。これはどうしてかというと、穢れているんだというような思想で、ずっと日本人が昔から持ってきた心だというようなことで説明した方がおいでた。なんかそういうようなことも分かるような気がしますね。

井上宮司

ですから先ほどお話したように、伊勢神宮なんかは典型的なものですね。使い捨てです。伊勢神宮では全部、釉薬(うわぐすり)をかけない、全部素焼きです。ただし、神様に使うものだけですよ。一般の人がたとえばお神酒をいただけませんかというと、素焼きならこぼれてしまうので、ちゃんと釉薬のかかったものをくれます。そうでない神様に差し上げるときは、全部素焼きです。素焼きの土器です。これは神宮で作る。よそで注文して作らせるものではない。あそこは随分お祭りがあるんですが、一度使ったものは全部捨ててしまう。ですからこれは使い捨て。

とにかく一番大きいのでこれくらい、5寸ぐらいになるのかな。器械は使わず手で作る。お箸は、神宮は全部八角です。お箸をお供えする。神宮では全部「熟饌(じゅくせん)」といって炊いたものです。最初に何をお供えするかというと、箸置きです。次にお箸を差し上げ、次に炊いたご飯を差し上げる。それが50ぐらいある。台はこれぐらい広い。ですから「お供え物をよこやまのごとくおきたらわして」という祝詞があります。

台の上に置く。置き場所もちゃんと決まっている。そして神に捧げる。普通の一般のお宮ではそういうことをしません。でも、ここ(風早宮大氏神)で使い捨てにするのはお神輿ですね。使い捨てにする。それと「常式物(じょうしきもの)」。お祭りに常に使う物。これはどんなものかといいますと、太鼓のばちとか奉幣の串ですとか、そういったものは全部新しくするんです。毎年新しくする。

そういうようなことで、お供えするときの平瓮(ひらか)という大きなお皿はもったいないですから、一枚何千円もするようなものだから、割れればしょうがないですが、そうでない限りは使いますが。常式物は必ず作ります。そんなところは滅多にないですよね。

司会(塾長)

何かありましたら。